【レビュー】三谷作品ザ・マジックアワーは映画趣味満載の映画(ネタバレ)
「ステキな金縛り」のレンタル開始記念。
三谷幸喜作品復習月間です。
「ラヂオの時間」「THE 有頂天ホテル」に続き、
今回は、「ザ・マジックアワー」です。
「映画ファンが作る映画」といった雰囲気の
映画への愛が満載の作品です。
映画へのオマージュに溢れた映画
(C) 2008 フジテレビ 東宝
いらっしゃいませ、市川崑監督が好きな、番台さんです。
この作品は市川崑監督へのオマージュも満載です。
「ザ・マジックアワー」は三谷監督の4作品目。
脚本も三谷幸喜が務めています。
古き良き時代の映画への愛が溢れる映画になっています。
評価(★5つで満点)
★★★(ほぼ3.5から4に近いくらい)
ネ
タ
バ
レ
で
す
よ
ストーリー概要
ボスの女に手を出した、妻夫木聡演じるギャングの一員「備後登」。
ボスに殺されそうになるが、
ボスが探してる「デラ富樫」という人物と知り合いだとうそぶく。
「デラ富樫」は、ボスの命を狙う殺し屋。
彼を連れてくれば、命は助けて貰えることに。
しかし、そもそも知り合いでもないので、
幾ら探しても見つからない。
追い詰められた彼が考えだしたのは、
売れない俳優に、殺し屋「デラ富樫」を演じさせ、ボスに会わせること。
売れてる俳優だとすぐにばれてしまうため、
売れない俳優を捜し、目をつけたのが俳優「村田大樹」。
備後は「自分は映画監督で、これから映画の撮影をする」と村田を騙し、
「デラ富樫」を演じさせボスに会わせるのだが、
どこまで騙すことが出来るのか・・?
といったストーリーです。
ボスの女「高千穂マリ」を深津絵里、
売れない俳優「村田大樹」を佐藤浩市
が演じています。
三谷映画はファンタジーである
三谷映画の多くに共通するのは、リアリティの無さだと思います。
どの映画もファンタジーの要素が強く、
どこか架空の世界でおきてる夢物語のように感じます。
前作の「THE 有頂天ホテル」でも同様に感じました。
高級ホテルという舞台がそもそも現実離れしています。
今回の舞台となる街「守加護(すかご)」も、
往年のアメリカ映画のセットのようなリアリティのない街。
架空の街で起こる、現実離れしたファンタジーなのです。
どこか抜けてるギャング達、
毎回メイクが変わるホテルのママなど、
こんな人いないでしょ?
という世界を楽しめるかどうかがこの映画を見る鍵です。
一方、「村田大樹」が、
撮影所で現実の厳しさに直面する場面は、
舞台となる街とは別、リアリティのある世界。
そこでは、人々がリアルに生活していますが、
一歩「守加護」に足を踏み入れると、そこはファンタジーの世界、
夢を見ることが出来る街なのです。
ストーリー的にはダレる所もあるし、
感情移入するところは全くないと言っていいほど薄い映画なのですが、
「映画ファンが自分の箱庭で遊んでいる」のを、
温かい目で見守りながら見る映画だと思います。
見つけるのが楽しいパロディネタ
この映画は、
スティーブ・マーチンのコメディ「サボテン・ブラザース」
SF傑作コメディ「ギャラクシー★クエスト [DVD]」
ピクサーアニメ「バグズ・ライフ」
に代表される、所謂「勘違い映画」「身代わり映画」「なりきり映画」の系統です。
三谷幸喜自身の作品では、
テレビドラマ「合い言葉は勇気」もそれに当たります。
この系列の映画では、
仕事を依頼する側が、全くの別人を本人だと勝手に思い込むパターンが多いのですが、
「ザ・マジックアワー」は、
別人と知りつつ仕事を依頼し、周りの人を騙すパターンです。
しかも仕事を依頼される俳優本人も
「撮影」だと言われ騙されているので、ちょっと複雑な筋書きになっています。
こういった、古い映画のパターンを踏んだ筋書きを始め、
ギャング映画、市川崑映画、クラシック名作映画など
往年の映画のパロディが満載の作品になっています。
■舞台となる街「守加護(すかご)」はギャングの街「シカゴ」をもじったもの。
(「ラヂオの時間」でもマシンガンと言えば「シカゴ」という場面がありました)
■村田大樹が代役で出る映画「黒い101人の女」は
市川崑監督「黒い十人の女」のパロディ。
天海祐希の衣装もそれっぽい衣装になっています。
市川崑監督も撮影現場のシーンで出演しています。
■村田大樹が何度も見る映画「暗黒街の用心棒」は
「カサブランカ」のラストシーンのパロディ。
■殺し屋「デラ富樫」という名前は、
往年のホラー映画で有名な俳優
「ベラ・ルゴシ」のパロディだと思います。
「ベラ・ルゴシ」はティムバートン監督が敬愛する俳優でもあります。
■「サボテン・ブラザース」の英語タイトルは「Three Amigos!」。
スリーアミーゴといえば、踊る大捜査線のおじさん達。
その一人、小野武彦が警察署長役で出演しています。
こういう何気ないユーモアやオマージュも入ってる、気が抜けない映画です。
注目ポイントはここ
今回は、どの俳優さんもしっかりした演技をしています。
深津絵里も妻夫木聡も、いい感じです。
中でも注目はこの2人。
戸田恵子と唐沢寿明。
戸田恵子の場末のママっぷりがよく、
この人はつくづくいい女優だなあと思います。
そして、唐沢寿明。
出演するシーンは少ないのですが、
こういう「上から目線の嫌な男」を演じさせると
とても良い演技をしますね。
結論
三谷監督はほんとに映画が好きなんだな、という事が確認できる映画です。
ただ、残念ながら、舞台演出と映画演出は別物なので、
舞台演出の上手な人がそのまま映画を上手に作れるわけではありません。
この映画もそういう状況に陥っています。
ストーリー的には、それほどハラハラしませんので、イマイチなのですが、
映画を愛している人が、愛情を込めて「趣味の映画」を作った、
という感じの映画なので、これは、その「遊んでる感」を楽しむのがスジだと思います。
映画ファンと言うことで、★をちょっと甘めにしました。
評価(★5つで満点)
★★★(ほぼ3.5から4に近いくらい)